能を知る・日本を知る(フロンティアプロジェクト)
いつか海外でたくさんの人とコミュニケーションしてみたい!世界を舞台に
活躍してみたい!だから、まず英語の勉強を頑張ろう!
英語学習に取り組む多くの人がこんな風に考えていることでしょう。
6月25日(土)のフロンティアプロジェクト授業にお迎えした、能楽プロデューサー
梅若幸子さんは、講演の中で次のようにお話ししてくださいました。
「英語はコミュニケーションのツールでしかありません。日本人として海外の
人たちと向き合うとき、きちんと日本のことを知らないと海外で勝負することは
出来ないのです。」
海外で能楽の公演を何度も経験されるなかで、自分たちがまず日本の文化を
知るべきであること、そうしないと海外でのコミュニケーションがはかれないと
いうことを、梅若さんは話してくださいました。
『伝統芸能には古くて堅苦しいイメージがあるかもしれません。でも、そこに
良い「核」があるから、だから今の時代まで残っているのです。伝統の良い「核」を
生かしながら、時代時代に合わせて形を変え続けていくべきでしょう。』
現在、梅若さんは「能とジブリ」・「能とJ-POP」のコラボレーションを模索中なのだ
そうです。
何か新しいことをやるにしても、まずはきちんとした「型」が必要であること。
(「型破り」というのは「型」がきちんと分かっているからこそ可能な変革なのです)
新しい何かとコラボレーションをする際には、コラボする対象と伝統、それぞれの
共通点と相違点を見つけ、そこからコラボの糸口を探る過程が大切だということ。
実体験に基づく貴重な教えの数々は、どれも大きくうなずきたいものばかりです。
東中野の梅若堂からお持ち下さった能装束も拝見しました。
見事な技術が駆使された衣装は、驚くほど高価なものでした(…8桁です)
高い技術で丁寧な仕事をしている日本の絹織物職人たち。
質が良いものをつくるから、品物は何百年も長持ちします。
すると、何百年を経る頃には、それまで需要がないだけに、高い伝統技術を
継承する人が少なくなってしまう、というジレンマがあるのです…と嘆かれる
梅若さん。技術を磨く人の意識が高いからこそ生じてしまう問題がある、とは
こうしてお話をうかがわなければ知り得ないことでした。
まだまだ、日本の文化について、日本人について、知るべきことがたくさん
ある、と気付かされました。きらびやかな衣装、重厚な伝統の陰に息づく
「日本」を感じた授業でした。